2015年7月7日火曜日

海苔でビーガンなそばつゆを作ってみる

海苔は面白い食材です。動物性の食品ではないのにイノシン酸を含んでいるのです。

グルタミン酸と旨味の相乗効果を期待できるヌクレチオド(いわゆる核酸系のうまみ成分)のうち、グアニル酸はシイタケなどに含まれていることが知られています。しかし、イノシン酸については基本的に動物性の食品にしか含まれていません。ところが、海苔にはなぜかイノシン酸が含まれています。


このことは、海苔を使って動物性の食品を使わない料理を作ってみようという発想に容易につながりますまあ僕はビーガンではないのですが、そばに使ったらどうだろうと思いいたりました。

そばの場合、歴史的には動物性の食品を使わないつゆも多かったそうです。かつおぶしをつかうことで旨みの濃い、その反面魚の生臭さが目立つつゆが増えたことを嘆く記述が『蕎麦全書』にもあるそうです(孫引きですが生臭つゆと精進つゆについて触れているページは参考になります)。

海苔をうまく使えば新しい精進つゆを一つ加えることができるかもしれません。それも、旨みはあるが魚臭さはないという理想のつゆが。また、花巻などという種物があるくらいですから、そばと海苔の香りとそばの相性は悪くない。これは面白いのではないか。


というわけで、海苔でそばつゆを作ることにしました。



まずは、イノシン酸を上手に引き出さないといけません。

そこで、検索して出てきた海苔の旨味成分について を参考にしてみます。半知半解ではありますが、まあなんとかなるでしょう。

いくらイノシン酸を含んでいても食味に影響がないなら意味がないのですが、「味の基本としてアミノ酸とヌクレオチドの共存が重要ですが、海苔は高濃度のグルタミン酸と数パーセントの程度のヌクレチオドを含んでいる」とあるので食味に影響する程度のヌクレチオドはありそうです。

そして「温水に浸すとアデニル酸が減少し、それに相当するイノシン酸が増加する現象がみられます。」とあるのが重要ですね。海苔に多く含まれるヌクレチオドはアデニル酸であって、これは呈味力が弱いから、酵素によってイノシン酸に変化させないといけない。

そのための最適の条件は乾海苔中の有用酵素の安定化機構に関する研究が参考になりそうです。まあよく分らんのですが、要するに30℃の温水に5分つけると5'-AMP(アデニル酸)が5'-IMP(イノシン酸)へ酵素によってほぼ100%変換するようです。


あれ、生海苔ではダメなのか。焼き海苔も酵素が失活しそうだから避けた方が良いかも。乾燥海苔が良さそうですね。


ということで、十センチ四方くらいに切り取った乾燥海苔を30℃の温水に5分強つけます。海苔がフワフワしてきたのでかきまぜてバラバラにしてしまいました。しかしどうも濃度が足りそうにない。煮詰めようかとも思いましたが、海苔の臭いが飛んだり逆に変な海藻臭さが出そうだ。

というわけでとりあえず凍らせました。凍結濃縮で濃度をあげようという作戦です。不純物の多いところから溶けるから、半分くらい溶けたところで氷を取り除けば濃くなるはず。



氷を取り除いて、食べるときに邪魔になりそうな海苔も濾すとこんな感じ。これで少しは濃くなったかな。
なんかえらいラベンダー色なんだけど大丈夫だろうか……。


さらにかえしを入れるとこうなりました。大分そばつゆっぽくなったな。


さっそく試食します。そばは適当に打ったものです。

食べた感じ、これは悪くないですね。海苔の香りもそんなに邪魔じゃないと思う。ただ、やはり旨みは弱いのでジャブジャブつけないと物足りないです。細めのそばに合わせた方がいいかもしれません。また、ちょっと甘さが強いのでかえしのみりんや砂糖を控えめにした方が良さそうです。

いい気分でそば湯を注いで飲んでみると、これが衝撃のまずさ。ふつうのつゆはおもいっきり濃い出汁に塩なれを計算して多めにかえしを突っ込んでるので、そば湯で薄めてもある程度美味しく飲めるんですよね。これはそば湯を入れると泣きたくなるほど薄い味にしかなりません。まあ僕はそば湯はそのまま飲むので別にいいのですが(強がり)。


つゆが弱いので細めのそばの方がいいかと思って、細めのそばも打ってみました。
ううっ、かえしの量を間違えてつゆが薄すぎる。細く切ったのはいいけど、細すぎてブチブチ切れるのを怖がって洗いや水切りを恐々やったせいでそばがグチャグチャになった。ダメだなあ。


結論として、このつゆは悪くはないと思います。僕はわりあい好みなのでこれからも食べると思います。ただ、他人に食べさせたら「なんやこれ、味がせんやないか!」って言われそうだなあ。かつおぶしの香りの方がそばに合うだろって言われても反論できないなあ。うーん、あくまで自分用の料理って感じですねえ。


あ、そうそう、海苔汁をだした残りの氷と海苔は豆腐となめこを入れて味噌汁にして食べました。


2015年6月3日水曜日

変わり和えそば 二種

最近よく食べている変わり和えそば二種を記録しておこうと思います。


ざるそばやかけそばではなく、和えそばをよく食べているのにはいくつか理由があります。一番の理由は手間が省けるということです。ざるそばにしてもかけそばにしても、出汁を取るのが面倒くさい。

また、魚を使わないそばを食べてみたいというのもあります。そばつゆによく使われるカツオ節の場合あまり魚臭いという香りではありませんが、それでもやっぱりワサビなどの臭い消しが欲しいな…となってしまう。実は、そばにおいて魚の香りは邪魔なのではないか。

まあ、そばとカツオは名コンビだし、明らかに僕の考えすぎだとは思います。肉をかけて食べるそばだってあるくらいだし、香りにこだわって変に潔癖になるのもねえ。それでも、たまには変わりそばを試してみるのも良いでしょう。


それでは本題のそば紹介に入りましょう。まずは納豆そば。魚の臭いがどうのこうの言っておいて納豆臭いそばを挙げるのは自家撞着に陥っているとの謗りを免れないところですが見逃してください

納豆そのままだとそばによく絡まないので、ウマゴヤシを混ぜることで空気を入れてふわっとさせています。それだけだと色的に汚いので、トマトとかいわれ大根も追加。納豆パックに入っているタレを混ぜて味をつけてしまう手抜きっぷりです。


つぎはきのこそば。煮切った酒で適当なきのこを煮込んで、かえしと合わせたもので和えました。今回のキノコはナメコとブナシメジ。

わりとどんなキノコでも大丈夫なので、きのこが余るたびにやっています。煮たキノコとかえしを合わせてまだ温かいところに洗ったそばを突っ込むので、シャキッとしたそばの歯ごたえなどはないです。でも、僕はそばって冷えてシャキッとしたものよりも、少し暖かいくらいの方が美味い気がするんですよね。


僕のよく食べる和えそばはこのへんに収斂してきました。

ちょこちょこ色んな食べ方を試してはいるのですが、失敗ばかりしています。それでも、他人に食べさせるために作っているわけではないのですから、失敗を恐れずに色々試してみたいものですね。

2015年5月27日水曜日

流行りに乗ってラーメンを自作してみました スープ、たれ、食べた感想編

製麺編続けて、スープをとって食べるところまでいきましょう。


スープは豚骨でいきます。自分の嗜好としては鶏ガラでとったスープをあまり好きではないようなので。


豚骨でスープを取ろうとするといくつか問題があります。

まずはどこで豚骨を入手するかということでしょうか。近所の肉屋や業務用スーパーをいくつか回ってみたんですが、豚骨を扱っているところはありませんでした。注文して取り寄せてもらうのも無理だというところばかり。

豚骨を扱ってそうな店はちょっと遠いので、そのへんのスーパーで売っているものでごまかしてしまうことにします。

ということで、そのへんのスーパーで打っている骨付きの豚バラ肉を買いました。5つくらいの塊をパックして売っているやつです。骨と肉を切り分けて、骨の部分を冷凍保存しておきます(肉の部分は煮込みやカレーなど普段の料理に使う)。2,3回分貯めれば一回のラーメンスープには十分な量の骨になります。


骨が手に入ったら、つぎに解決しないといけないのは加熱の問題です。何時間も火の前で見張っていなければならないのはとても面倒です。

なので、シャトルシェフで加熱しました。魔法瓶みたいな保温調理機です。一般的には圧力鍋を使うんでしょうが、もっていないので仕方がない。8時間ごとに加熱しなおして、合計丸一日加熱してみました。

ただ、加熱したからといって出来上がりにはなりません。シャトルシェフの場合、水分が飛ばないのが致命的です。煮干しや昆布などの乾物を使う和風だしと違って、肉や骨を使ったスープはある程度水分を飛ばして濃縮しないと物足りない感じになってしまうと思います。たとえば、僕の参考にしている料理本18ページで豚と鶏を使った中国風スープの取り方を説明しているのですが、これも「およそ半量に煮詰まったらできあがり」になっています。

ということで、加熱した後に水分を飛ばす工程を加えます。表面積の広いフライパンなどで沸騰させればすぐでしょう。

これがシャトルシェフで加熱した後にフライパンに移したところ。

ここで強火で一気に過熱すれば白湯に、濁らないよう弱火で加熱すれば清湯になると思います。今回はさっさと仕上げたかったので強火で20分前後加熱しました。

加熱後はこんな感じになります。味見をした感じ、水分と一緒に嫌な臭みも飛んでしまったようだったので、ショウガやニンニク、ネギの青い部分などの匂い消しは入れないことにしました。

骨を取り除いて、一度器に移して写真をとってみました。豚骨というよりも、骨の周りに残っていた肉やスジの部分が溶け込んだ白濁スープといった方が良いですね。まあ、それほど「骨髄からとりました!」ってスープが好きなわけでもないしこれでもいいかなあ。


つぎはタレです。骨と一緒に加熱しておいた豚肉を醤油タレにつけます。その醤油タレを煮詰めます。一度煮詰めておかないと、臭みが残るし、味がボンヤリするように思います。

どうもミリンがくどく感じられるので今回は醤油タレにミリンを使っていません。ミリンのかわりにすりおろしたタマネギと醤油を合わせたものを使っています。

煮ている様子が下の画像です。トマト缶が消費しきれなくて残っていたので、トマトも少し入れました。


最後に全て合わせてできあがり。

肉は加熱しすぎたせいでボロボロになってしまったので、チャーシューぽく切ったり焼いたりしないでそのまま乗せています。始めは和歌山ラーメンのように仕上げようと思っていたのでカマボコつき。

スープは悪くはないですね。トマトも意外に違和感がありません。ただまあ、変にトマトを入れたりせず、普通の和歌山ラーメンっぽい仕上げにした方がよかった気はします。料理素人はやらなくてもいい変なことをしたくなっちゃうんですよねえ。

麺はちょっと柔らかい気がする。
加水率が高めのせいでしょうか。それとも和華は柔らかく仕上がるんでしょうかね?加水率の低い製麺は難しいし、和華を使い切るまでは他の粉を使いたくない。ということで、つぎはもうちょっとカッチリさせるために貝殻焼成カルシウムをちょろっと混ぜてみようかと思います。


自作ラーメンは手間や時間がかかりますねえ。しかし、工夫をすれば台所に一日中こもっていないといけないというわけではなさそうです。僕のように徒手空拳でやろうとせず、圧力鍋や製麺機をうまくつかえば、さらにハードルは下がるでしょう。

僕もハードルを下げるように工夫しながら、ちょくちょく作っていきたいと思います。

流行りに乗ってラーメンを自作してみました 麺編

最近の自作ラーメンブームは凄いですね。ネットで自作ラーメンと検索すれば、工夫をこらしたラーメンがたくさんでてきます。

この流行に乗って僕も作ってみました。僕は製麺機を持っていないし、ラーメン用の豚骨を買う気概もないし、有名店を再現するほどラーメンに詳しくありません(一月に一度も食べないかもしれない)。そんな僕の作った手抜きラーメンですが、せっかく作ったので公開してしまいます。


まずは麺からいきましょう。小麦粉にかん水を回します。

小麦粉は市販のパン用強力粉でもいいと思いますが、せっかくなので通販で麺用粉「和華」を買いました。和華にしたのは水なじみが良い的なことをマダラさんのブログで見たからです。

中華麺は塩とかん水で小麦粉をガッチリ固めてしまうものなので、製麺機やパスタマシーンがないと加工が難しいです。手打ちで作るなら、必然的に加工のしやすい多加水になります。でも僕は多加水のピロピロした麺はあまり好きではないのです。

そこで、水を控えめにしてもなじみやすいという粉を選んでみました。まあ、手打ちで作る以上、結局多加水気味になることは避けられないと思いますが。特ナンバーワンがベーシックで良いとツイッターでマダラさんから指導をいただいたので、そのうちそちらも使ってみます。


かん水は炭酸ナトリウムの水溶液。炭酸ナトリウムを選んだのは、他のアルカリ性物質を入れた麺と作り比べてみて素直で食べやすいと感じたからです。

市販の粉末かん水や貝殻焼成カルシウムを使ってみたこともあるのですが、前者は食堂の中華麺のようなわざとらしさがピンとこなかったし、貝殻焼成カルシウムだとガッチリした食感になりすぎると感じたのです。あ、重曹の水溶液という手もありますね。これはアルカリ性が弱いのでイマイチラーメン向きではないと僕は思います。

ちなみに、炭酸ナトリウムは実家でこんにゃくを固めるときに使っていたものをもらってきました。まあ、重曹を水に溶かして沸騰させれば熱分解で炭酸ナトリウムを造れるのですが、mol数とかを計算するのが面倒臭いです。中学化学もよくわかっていない無能ですから。たしか重曹の6割程度の重さの炭酸ナトリウムができるはずだったような。

小麦粉は一人分で100g。加水率は失敗しないように40%。これより加水率を下げると手打ち製麺の難易度がグッと上がる気がします。しっかりしたローラつきの製麺機があれば加水率35%くらいで作りたいんですけどね。

炭酸ナトリウムは1g。ちゃんと溶けるように前日から水に溶かしてよくかき混ぜておきます。塩も1g入れました。塩を入れるとしっかりした食べごたえの重い麺になる気がします。ただ、うどんの場合のように長い茹で時間をとって茹で汁に塩分を追い出すことはできないので、塩の量について選択肢は多くないですね。


7割くらいのかん水を小麦粉に投入します。水の馴染んでいない部分があるとそれだけで麺は失敗なので、一生懸命かきまぜます。湿った小麦粉状態になればOK。


さらに残りのかん水を全て混ぜたら寝かせます。僕は丸一日寝かせました。
とにかく小麦粉と水をなじませる。水となじんでいない小麦粉は製麺の大敵(たぶん)。


寝かしたものをまとめると下のようになります。あまりコネずに空気を抜く感じでまとめると良いと思います。あまりこねるとグルテンがぶちぶちに千切れた感じになって逆効果感が凄いです。
これに水の入ったナベを乗せて一日寝かせます。おもりを乗せるのは空気を抜きたいからです。効果があるのかは微妙なところですが。製麺では生地の中の空気は敵だと僕は思っています。


つぎは延ばし。ただ、かん水と塩でガチガチに固まった麺帯を麺棒で延ばすのは正直つらいです。だから手打ち麺は麺帯が柔らかい多加水で作るんでしょう。製麺機ローラーのありがたみを感じる場面ですね。正直、やはり中華麺作りに製麺機は不可欠だと思います。

しかし、僕は製麺機を持っていない。製麺機がない以上、裏ワザでごまかすしかありません。麺生地には正直あまり良くないと思いますが、50℃前後の湯で温める。温度が高いとグルテンの流動性が高くなって麺棒でも楽に延ばせるようになります。
延ばしたら三枚に折りたたんで、また延ばす。複合圧延のつもり。


延ばしたらこんな感じになります。
 これを麺棒にまきつけてラップで覆い、また寝かせる。



最後は切りです。切ってまとめたのが下の写真。
麺の長さは35~40㎝くらいがちょうどいいと思います。そばは30cm前後でも良いと思うのですが、ラーメンはもうちょっと長くないと明らかに物足りない。

僕はそんなに長い麺切包丁を持っていないので、麺帯を折りたたんで切っています。 麺切包丁がなくても、普通の包丁でも切れますよ。ただ、人数をこなさないといけない場合などは製麺機がないとつらいでしょうね。


作業の段階ごとに一日寝かしているのは、僕の都合上夜しか作業できなかったからです。たぶん数時間寝かせればOKなんだと思いますが、試していないのでよく分らないです。


切りあがった麺はキッチンペーパーでくるんで、ビニール袋に入れて冷蔵庫で寝かせます。

これくらいの加水率だとビニール袋の中側に結露するので、キッチンペーパーにくるんでおかないとベチャベチャになります。毎日濡れていないかチェックしないといけないですね。寝かし時間は3日以上とりたい気がする。寝かせないとコシが出ないです。寝かせている間にかん水の成分が反応するのでしょうか?

スープ、できあがり編に続きます。

2015年2月25日水曜日

そばのかえしと出汁を工夫してみる

最近、僕はそばを手打ちしているのですが、考えてみればかえしや出汁に対するこだわりが薄かったかもしれません。かえしや出汁ももっと色々考えて試してみるべきだと思いました。

そこでかえしと出汁を自分流に工夫したそばを作ってみます。


まずはかえしから。醤油とミリン砂糖を混ぜて加熱したり寝かせりするアレです。

そもそも、かえしはどういった仕組みで美味くなっているんでしょうか。適当に検索してみて出てきたのがこの論文です。

どれどれ、中まで読んでも理解できないだろうし、結論だけでも抄録で確認してみるか。

「(前略)かえしのねかしに有用な微生物の関与しない場合の熟成と思われる品質の改善は、エタノールや水と同時に蒸発するような高蒸気圧成分の揮発による現象ではないかと推定できた」

ほうほう……高蒸気圧成分って何(絶句)

まあ要するに、醤油をかえしにすることで、そのまま使うよりも香りの角が取れたり塩味の角がとれたりして美味しくなると。その原因として考えられるのは微生物の関与と食味にとってマイナスの香りが揮発することだということですか。


微生物はちょっと置いておいて、加熱して醤油臭い嫌な臭いを揮発させればいいんでしょうかね。

しかし、ただ醤油を加熱しても不味くなるだけだよなあ。煮立った味噌汁みたいなもので良い香りも悪い香りも全部ふっとんでしまう。

あ、みりん砂糖を混ぜて加熱するかえしの場合には良い香りは飛ばないということは、糖分と一緒に加熱することがポイントで、糖分のおかげで美味しい香りは逃さない仕組みになっているのかもしれないな。よっしゃこれでやってみよう。

どうにも怪しげな推論ですが、とりあえず糖分が大事的な方針でやってみましょう。


まず、スプーン半分のみりんと同量程度の砂糖を煮詰めて水分を飛ばし、ネバネバした状態にします。糖分の濃度をあげちゃおう作戦。

次に、湯を張ったフライパンに煮切ったネバネバの入った鍋を入れて加熱する。かえしを作る際に沸騰させると、良い香りも悪い香りも全て飛んでしまうし、焦げ臭さまでついてしまうようなので、湯煎のような感じでゆっくり加熱する。

醤油はスプーン2杯程度。これを少しずつ入れていく。いきなり全部入れてしまうと、全体に占める糖分の割合が下がってしまう。少し入れて加熱して水分を飛ばしてネバネバになったら、また少しいれて加熱する。これを繰り返しました。

なお、醤油みりん砂糖の割合は、「一杯のそばだとスプーン二杯程度の醤油の量だよなあ。甘みはその半分くらいか。みりんと砂糖は……同量でいいや」くらいの適当な感じで決めたものです。なんかグーグルに聞いてみたところ、砂糖とみりんの割合は結構シビアに調整したりするみたいですね。

だんだん醤油の香りがなくなって、焦げ臭さのない醤油せんべいみたいな匂いになってきました。とりあえず醤油の邪魔な香りは飛んだ気がするので、これで出来上がり。


つぎは出汁です。

基本となる出汁はこれとかこのへんのやり方で取ったものです。昆布出汁に煮干しを水出ししたものですね。

ただ、これをこのままそばの出汁に使うのはパンチ不足だと思います。
ざるそばつゆにするなら、これを濃縮して濃い出汁を作ります。煮詰めるとか、凍らせて半分溶かして凍結濃縮の要領で濃くするとか。でもまあかけそばでそれをするとくどくなりそう。なにかもう少しアッサリしつつパンチを出せるものはないか。

ということで、旨みの塊であるトマトで補強してみることにしました。出汁をとる際にドライトマトも使っているので、追いトマトですね。中の汁の部分を煮だします。実は料理しながら食いました。
僕は、かけそばのつゆでは軽く酸味のあるものが好きです。だから、トマトの酸味も意外に悪くないのではないかと。

なお、かけそばのつゆが酸っぱいのは鰹節の状態がよくないせいだとか何かで読んだような記憶があります。あまり良いことではないのかもしれないですが、まあ好きなんだから仕方がない。

出汁に放り込んで煮ていきます。 
十分に煮えたらそーっと茶こしでこす。

茶こしでこしたものはこんな感じ。
これにさらに仕上げ段階で鰹節ドーピングをします。

このトマト出汁を少し分けて、なめこを煮ました。
カツオで出汁をとった後でなめこを煮るとかつおの臭いが飛んでしまいそうな気がしたし、なめこの入った汁にかつおぶしを投入するのも無理があると思ったので、別にわけて煮たわけです。最後にとまとかつお出汁と合わせる予定。

かつおぶしを削り、ネギととろろを用意します。
長芋のはしっこの部分だから汚い色だなあ……。でもすりおろしちゃったし、これを使います。


鍋に湯を沸騰させてそばを茹でる準備OK。右の丼にはそばを温め直す用の熱湯が入っています。
僕のそばの打ち方についてはラベル「そばの打ち方」をクリックしていただければ記事が出ると思います。


ここからは忙しくて写真をとっていませんので、文章で適当に説明します。

かつおぶしドーピングをしてなめこ、かえしと合わせたかけつゆを準備しました。

そばは茹でて洗って温め直しました。

そして全部を合わせてとろろとネギを乗せて出来上がり。


できあがりの画像がこちら。
とろろが汚いよ~。邪悪な波動に目覚めてやがる……。

麺はこんなもんかなあ。
もうちょっと上手く打てる気もするけど、僕くらいの技術ならこれで満足しないといけないんでしょう。挽きぐるみの粉を使ってみたのですが、温かいそばには合いますね。ツルっとしていて二八そばみたいだ。


肝心の出汁とかえしの味は……どうなんだろう?不味いとは思わないけど、そんなに特別に美味いわけでもないよなあ。

トマトは予想していたほど影響力がなかった感じです。あれくらいの量ならこんなものなのか。いやでも悪くはない(と思う)。

確かにキツい醤油の香りはないから、かえしの効果もあったのだと思います。まあこれなら成功といっていいのではあるまいか。自分に甘いかなあ。


結果、そばを作る際の選択肢としてはアリだと思いました。ただ、面倒ですよね。かえしは煮詰めてドロドロにしてしまう方式だから、大量につくって容器に保存しておくこともできないし。


いろいろ試してちゃぶ台返しですが、そもそも僕はかえしじゃなくて醤油をそのまま使った醤油くさいそば嫌いじゃないんですよね。それはそれで美味いような。

え、ふざけんな時間をカエシてって?いやダシ(親父ギャグで締めてごめんなさい……)。

僕のそばの打ち方 茹で、仕上げ編

水回し、練り編延し編、切り編と延々続いてきた僕のそばの打ち方。この記事でやっと締めくくりです。

生粉打ちの場合、茹での工程はシンプルです。


まず、寝かしの有無について。そばは「挽きたて・打ちたて・茹でたて」が美味いといいますが、北東製粉さんのホームページを見ると15分から30分くらい寝かせた方が空気が抜けて美味いみたいですね。

パリパリに乾燥するとダメですが、ビニール袋等に入れておけば一晩おいても劣化した感じはしないです。むしろ水分が適度に飛んで(?)濃い味になるかも。

僕はそばを打ってからつゆなり出汁なりを準備するので、毎回ちょうど15分から30分くらい寝かした状態で茹でることになります。


茹でる前に麺を持ち上げてゆすり、打ち粉を落とします。脆いので麺を壊さないように注意。


沸騰した湯に麺を放り込む。再沸騰して吹き上がる寸前くらいに湯からあげます。時間でいえば30秒から40秒くらいでしょうか。太さで多少変わります。

湯を捨てながらザルに移さずとも、すべての麺がきっちりつながっていれば、箸で持ち上げるだけで全てザルに移すことができます。でもまあ、湯を捨てながらザルに移した方が楽ですよね。

後でそば湯にするので、茹で湯を流してしまってはいけません。湯を捨てながらザルに移すときは、下の画像のようにザルの下にもう一つ鍋を用意して茹で湯を受けるようにします。


水で洗い、ぬめりを落とせばできあがり。

ざるそばなどの場合、氷で締めたりすることもあるようですが、僕は冷やしてキュッと締まったそばはあまり好きではありません。ソフトな食感のそばの方が味や香りがよく分かる気がします。

温かいそばにする場合は、洗った麺を湯で温めてから出汁と合わせます。


今回打ったそばは下の画像のようなできあがりになりました。とろろの色が汚いのは見逃してください……。余っていた長芋の端の部分を使ったらこうなってしまいました。


麺リフト。ブログに乗せるために丁寧に切ったので、僕の打ったそばにしては麺の太さのブレが少ないです。
このそばをつくる様子を確認したい方はこちらでどうぞ。


そばを食べ終わったら、とっておいた茹で湯でそば湯を作ります。食べ終わるころには茹で湯の底にそばの成分が沈殿しているので、上澄みを捨てて沈殿しているものを軽く温め直す。これでトロッとしたそば湯のできあがり(自己流すぎてこれはあまり正しくないような気はする)。

茹で湯に打ち粉がたくさん混ざっているものは、トロトロではあってもそば湯にザラつきを感じるので苦手です。これを避けるために、打ち粉はキッチリはらってから麺を茹でたいです。

といっても生粉打ちの麺は脆いので派手に打ち粉を払うわけにはいかない。結局、打ち粉は切りに必要最小限なギリギリの量しか使わないのが良いと僕は思います。

そば湯はつゆに混ぜて飲むものですが、生粉打ちのそばの場合、そばの香りと味がしっかりしているのでそのままで飲んでも物足りない感じはしません。僕はたいていつゆを混ぜないで飲んでいます。


最後にそばのつなぎについて。

僕は生粉打ちのそばしか打っていないんですが、味や食感、香りはつなぎを入れたそばの方が良い場合も多いと思います。例えば、近くのそば屋では、思いっきり荒く挽いたそば粉を使って香りや食感を楽しむそばを出していました。この場合、そばだけではつながらないから小麦粉を混ぜることになりますが、生粉打ちのそばよりもそばの味や香りが強いものでした。

また、温かいそばの場合は小麦粉をまぜたものの方が向いています。そばだけだと湯に溶けやすいですし。へぎそばのように、つなぎを工夫することで面白いものができることもあると思います。

ただ、つなぎを混ぜたそばを僕は打ったことがないので手を出しにくいんですよね。生粉打ちは、慣れると作業がシンプルで簡単、時間もかからないです(少なくとも一人分作る場合は)。水回しにしろ、茹で時間にしろ、つなぎをまぜることで複雑になると思います。また、そばは茹でるだけじゃなく、つゆや出汁をとることも考えないといけないですから、つなぎまで考えて色々工夫するのが面倒なんですよね。

そばのつなぎについては、色々試す余裕がでてきたり、複数人数のそばを切るので麺帯の脆い生粉打ちでは無理だとなったりしたときに考えたいです。


ぐちゃぐちゃ細かいことを書いてきましたが、そば打ちは仕上がりにこだわらなければ思ったより簡単です。慣れれば麺打ちは30分前後でできるので時間もかからない。あまり肩に力を入れず、手軽に試してみる価値はあると思います。

僕のそばの打ち方 切り編

僕のそばの打ち方、水回し、練り編延し編に続いて切り編です。


かなり几帳面に工程を書いていますが、延し編でも書いたように、僕は水回しと練りだけちゃんとしていれば後は適当で良いと考えています。きれいな麺をつくろうとすると手間がかかるけど、別にこだわらなくても美味しい麺は食えるんだってことですね。


まず道具から。切りで使うのはこま板と麺切包丁です。

こま板はホームセンターで買ってきた100円とか200円とかの木材を接着剤で貼り付けたもの。大きさや枕の高さをどう考えて作ったかは切り工程の中で説明します。きれいな麺にこだわるのでなければ、菓子箱のふたを代わりに使ってもいいし、こま板なしで切れないこともないと思います。

麺切包丁は30cmのものをアマゾンで買いました。本当は30cm後半の麺切包丁が欲しいのですが、高くて手が出ないので……。貧民でごめんなさい。お金が欲しくて死にそう。これもきれいな麺にこだわらないのであれば普通の包丁でいいと思います。ただ、麺切包丁なしできれいな麺を切るのはほぼ無理です。

麺切包丁は濡れたまま放っておくとあっという間にサビが出るので、切り終わったら濡れたふきんでそば粉をふき取って、食用油を薄く塗っておきましょう。僕は水分がついたままで放置したせいでサビを出しました。泣きながら重曹で磨いてサビを落としました。一応サビは落ちましたがこれが正しい処置だったのかいまだに分かりません。

切りの工程では、製麺機やパスタマシーンを使ってはどうかという疑問もあります。僕は製麺機やパスタマシーンを持っていないのでよく分らないのですが、生粉打ちのそばに限っては麺切包丁で切ることに優位性があると思います。生粉打ちの麺帯はとにかく脆いですから、持ち上げたり移動したりしたくない。切った麺もできるだけ動かしたくない。極端な話、延したら全く動かさずに包丁を入れて、まな板ごと直接湯に放り込みたいくらいです。製麺機やパスタマシーンはどうしても麺に負荷がかかる場面が多い気がします。


でははじめましょう。まずは延して出来上がった二枚の麺帯を重ねる。
大きさがキッチリ合っている方が、端のキレッパシ麺が少なくて済むし、厚さのムラもなくてすみますね。まあそのへんを合わせるのは慣れだと思います。本当はでっかい生地を延して折りたたんで合わせる方が麺帯の大きさのムラが出なくていいんでしょう。

重ねるときは、まな板上、麺帯と麺帯の間、麺帯の上に打ち粉をふります。麺帯と麺帯の間の打ち粉は麺同士がくっつくのを防ぎ、麺帯の上の打ち粉はこま板がスムーズにズレるのを助けてくれます。

意外に大事なのはまな板の上の打ち粉です。この粉をしっかりふっておかないと麺とまな板の間のクッションがなくなり、麺切包丁で直接まな板を切り込むようになってしまいます。そうなると麺を切り離しにくいだけでなく、麺切包丁の刃を痛めることにもつながります。


次に問題になるのは、重ねた麺帯をさらに折りたたんで切るかどうかということです。
折りたたまないのなら、上の画像の赤の矢印の長さに平行に包丁を入れないといけない。これだと包丁が少しブレただけで、包丁の切っ先の部分と顎の部分で麺の太さが大きくブレることになってしまう。一方、折りたためば黄色の矢印の長さを切るだけですむ。これだと簡単。

また、そもそも麺切包丁が小さい場合、折りたたまないと長い麺は作れません。

しかし、生粉打ちで麺帯を折りたたむのは素人には超がつくほど難易度が高い。というか、並みのそば打ちプロでも無理なのではないか。上述したように、そばの生地はもろいですから折りたたむとそこで折れてしまう。仮に折れなくても、折りたたんだところに変な癖がついてしまうのは避けられない。

技術の足りない素人は、折りたたまず切るに限ります。そのことで問題になる切りにくさ、幅の揃えにくさ等の問題は切り方を工夫することでカバーしましょう。


麺帯にこま板を乗せた様子。
切り終わりに近づくとこま板の下の麺帯がなくなってこま板が不安定になるので、こま板を作るときに出る余った木の板をしきます。この木の板を麺帯の端にピタッとひっつけて置けば、麺帯があっちこっちにズレるのを防ぐこともできます。あっ、この画像はひっつけてないですね。失敗失敗。


準備は整いました。いよいよ切り本番です。youtubeなどでプロが切っているのを見ると、キャベツの千切りをしているかのようです。

しかし、どう考えてもあんなこと僕にはできない。できないなら、できることに分解しましょう。僕は以下の4工程に分けました。

1 枕に包丁を添わせる工程
2 麺を切る工程
3 麺を切り離す工程
4 こま板をズラす工程

順に説明していきます。


1 枕に包丁を添わせる工程
切っている最中に写真をとるのは難しかったので、後からそれっぽい写真をとりました。こま板の下の板を麺帯だと思って下さい。

こま板の端の高くなっている部分を枕というそうです。ここに包丁を添わせる。これが素人には意外に難しい。

枕の側面に平行に包丁を入れると、枕にピッタリと添わせることができず、枕と包丁の間に隙間ができてしまうことがあります。これだとキレイに麺を切ることができない。

そこで、エグるように斜めに包丁を入れてから包丁の角度を戻すことで隙間を作らずに枕に包丁をそわせます。

このとき、斜めになったままの状態で麺帯を切りつけないように注意します。麺帯に斜めに包丁を入れてしまうと、上の綿帯と下の麺帯で太さにムラができてしまいます。
四角を麺帯、赤い線を包丁の軌道とみなして下さい。斜めに包丁を入れて切ってしまうと、黄色の矢印のように上下の麺帯で大きくムラが生じてしまいます。斜めに包丁を入れるのはあくまで枕に包丁を添わせるためだけであることを忘れてはいけません。


2麺を切る工程
枕に包丁を添わせたら麺を切ります。上から下に垂直に包丁を入れます。斜めに刃を入れると前述のようなデメリットが生じるので注意。


3 麺を切り離す工程
包丁上から押し下げるだけではなく、前に動く成分を加えて前方に押すようにするとスムーズに麺を切り離すことができます。

しかし、動きが複雑になるのでせっかく枕に添わせた包丁がブレてしまいがちです。そこで、麺を切り離す動きは工程を分けて行います。


4 こま板をズラす工程
包丁を斜めにしてこま板をズラし、次の麺切りの準備をします。

画像で見ると以下のようになります。
 赤い矢印の部分が麺の太さになります。

ここで大事なのが枕の高さ。下の画像の黄色い矢印の部分です。
枕が高いと少し傾けるだけでこま板が大きくズレます。ズラしやすい反面、ブレが大きくなるデメリットがあります。

枕が低いと傾けてもあまりズレません。ズラしにくい反面、ブレが出にくいメリットがあります。

こま板を自作するときは、ここが一番大切なポイントになると思います。測ってみたところ、僕のこま板の枕は1.8㎝みたいです。今グーグルに聞いてみましたが、まあ平均的な高さってところみたいですね。

ちなみにこま板が細長いのは、片づけるときに邪魔だからコンパクトにしただけで深い考えがあってのものではありません。

あ、コンパクトで軽いな方が扱いやすいっていうのはあるかもしれないですね。しかし、重い方が安定してくれるという意見もあるみたいですし、軽い方が良いとは限らないよなあ。

こま板をズラす工程で気をつけないといけないのは左手を置く位置です。偏ったところに手を置くと、こま板がブレてしまう。


上の画像はコマ板の上部をおさえて強く固定したせいで、下部が大きくズレてしまった様子です。

手は真ん中に添えた方がブレが少なくて良いと僕は思います。
そうそう、こういう感じ。

プロでもない限り、一定の幅でズラし続けるのは難しいと思います。包丁を入れる前に、こま板からはみ出ている麺帯を見て確認して、ズレ方がおかしい時はこま板を動かして正しい位置に直しましょう。


以上のような工程を経て切り終わったのが以下の画像。 
両端にキレッパシが出てしまうのですが、これは茹でてサラダにでも混ぜて食べると美味いですよ。 


余った打ち粉とキレッパシを皿に入れて整理しました。
打ち粉は7g用意しましたが、半分くらい余りました。生粉打ちのそばの場合、麺を持ち上げて粉を落とすという作業がやりにくいです。湯に通すまではもろいので可能な限り動かしたくない。初めから打ち粉は必要最小限だけですませて、よけいな負荷のかかる作業は減らしたいものです。


そば粉100g、一人分の麺帯を切るのには大して時間がかかりませんし、スピードを競うわけでもないので、マグロの柵から刺身を切り取るようなペースで切っていけばいいと思います。僕はそんなレベルです。

といってもやっぱり面倒なので、なれてきたら工程をひっつけて作業しましょう。僕は切りを二段階にしていることが多いです。枕に包丁を添わせる工程と麺を切る工程を一つに、麺を切り離す工程とこま板をズラす工程を一つにまとめます。

ちなみに、僕のツイッターで「そばを打ったが麺の太さがそろっていない」とグチっているときは、工程をひっつけて作業をした結果、失敗してしまった場合がほとんどです。


切り編はここまで。茹で、仕上げ編に続きます。

2015年2月24日火曜日

僕のそばの打ち方 延し編

僕のそばの打ち方 水回し、練り編の続きです。この記事は延し編。


しょっぱなから何ですが、水回しと練りさえしっかりしていれば後はどうやったっていいと僕は思っています。水回しと練りを怠るとボロボロでまともに食べられない麺になってしまいますが、延しや切りが適当でムラのある麺になってもそれは美味しく食べられます。サラダなんかに混ぜ込むならむしろムラのある方が美味しいくらいです。

この記事はかなり几帳面に工程を書いていますが、これはきれいな麺を作るための工程だと思っていただければ。麺のきれいさを気にしないで適当に延ばして切ってもそれなりに味は美味いです。


まずは道具の紹介から。延しに必要なのはまな板と延し棒です。

僕が使ってるまな板はアマゾンで買った家庭用のまな板のデカいやつです。
本格的にやるならこれでも小さいんでしょうが、個人の趣味でやるならまあこんなもんでしょう。普通のまな板でも延せなくはないので、初めからわざわざ買わなくてもいいと思います。僕も普通のまな板で延していました。やってみて必要だと思ったら買えばいい。

延し棒は確か百円ショップで買ったもの。買う前は15㎝くらいのミニすりこぎで延ばしていました。まあこれも適当。


それでは作業に入ります。延す前に、生地の表面をしっとりさせると良いです。加水量がちゃんとしていれば心配することもないんですが、加水が足りなかったり表面が乾燥したりしている場合は、延す際に端にヒビ割れが入ってしまう。下手をすると麺帯全体がボロボロになってしまいます。そうなるのが怖いので、僕は念のために表面をしっとりさせてから延すようにしています。

濡らしてから軽く拭いた手で生地をペタペタしてしっとりさせます。ほんとうにしっとりさせるだけです。水滴がついているような手で触るとドロドロになって台無しになってしまいますので注意。


はじめに延しで一番大切な注意点を。引っ張るように延すのはNGです。そばの生地はベタベタした粒同士がくっついているだけなので、引っ張るように延すと千切れていきます。延すというより棒で押し固めていくイメージです。

グルテンのできる小麦粉の生地と違って脆いことを頭に入れて作業をしないといけません。生粉打ちの場合、中華麺を作る際によく行われる麺帯を合わせるような作業はできないし、たぶん必要もないんじゃないかと思います。


それではまな板と生地、延し棒に薄く打ち粉をして延していきます。まず角を出す。
矢印のように棒を動かせば、角ができます。


角ができたのが下の写真。
もう後はこれを希望の大きさに延していくだけです。


きれいに延すために注意すべきなのは、 形を整えるときには厚い方から薄い方に生地を移す工程を入れないといけないということです。

具体的に説明します。角を出した後は、どうしても生地の厚みが偏ります。画像に色をつけてみました。赤のところが一番厚く、次に厚いのがピンク。青の角の部分は逆に薄い。

これに気付かない僕がそのまま漫然と延ばしてしまったとします。そうすると厚い部分が生地の輪郭から飛び出すような形になってしまいます 。生地が余っているところだけ、余計に延びてしまうのです。
せっかく出した角が埋もれてしまった……。ここから焦って青い部分を延ばして形を整えようとすると、ただでさえ薄い青い部分がさらに薄くなって、麺帯の厚さにムラができてしまいます。こうなるときれいな麺が打てない。


こうならないためには、厚い赤やピンクの部分の生地を、薄い青の部分に寄せていく工程が必要です。下の画像のように棒を動かす。×のところには棒を動かさない。
赤とピンクの生地の余っている部分を青の部分に寄せるわけです。そうやって厚い方から薄い方に生地を移してから角の形を整える。

麺帯が大きくなってくると、臨機応変で形を整えないといけない場面がでてきます。そのときも、厚い方から薄い方に生地を移す工程を入れることを忘れないように。それさえ忘れなければ、そばの生地は柔らかいので、そんなに手こずらずに延すことができるはずです。


延し終わった麺帯がこちら。僕は大体30㎝くらいの長さになるように延します。
麺帯の厚さや長さは、どういった太さや長さの麺を作りたいのか、個人の好みで決めれば良いと思います。


個人の好みとは言いましたが、麺の長さは大きな問題ですからちょっと書いてみます。

この点についてよく聞くのが「うどん一尺、そば八寸」という諺です。一尺は30.3㎝、八寸は24.2㎝。

確かに、僕もそばはモタモタしないでスッキリ食べたいですから、うどんよりも短い方がいいとは思います。しかし、この20cm前半の長さというのは、実際やってみると分かりますが、明らかに短すぎる!

近所のそば店を回って長さを調べてみたのですが、そばの場合、30cm前後の長さが多いみたいです。僕もその程度の長さが味食べやすさ等の点でみて適当ではないかと思っています。

「うどん一尺、そば八寸」というのは、そばの生地がもろいせいで長い麺を作るのがそもそも無理だったという事情もあるようです。グーグルで検索してみると色々書いてあって面白い。

僕の場合も、技術がないから30㎝弱の長さで満足している面があります。切り、茹で編で述べますが、麺切包丁が30㎝の長さで生地を折りたたむ技術もないので、30㎝弱の長さの麺までしか作れないのです。30cm後半の長さの麺切包丁が欲しいけど、そういう麺切包丁はめちゃくちゃ高いんだよなあ……。


閑話休題。本題に戻りましょう。

僕は生地を二つに分けて作業しているので、もう一つの生地も同様に延します。

先に延し終わった麺帯は移動させておきます。他のまな板やコマ板の上に乗せておきましょう。脆いから丁寧に。乾燥を恐れてビニール袋等をかぶせる必要はないと思います。麺帯にしてしまえばもう延す際の強敵である乾燥を恐れる必要はないし、そば生地は意外に簡単に延せるので先の麺帯が乾燥するほど時間がかかることはないと思います。


生地が延せたらいよいよ切り編です。